今月は、平成22年4月号に掲載したコラムをご紹介します。
尚、今の平成27年通常国会の民法改正で、「敷金はその名目を問わず、大家は借主に対し原則返還義務あり。」と「敷金規定」が新設されました。2〜3年後くらいの施行予定です。
今後の実務がどうなるか、注目です。
平成22年4月号 「敷金に関する最高裁判所判決」
Q 「3月末で引っ越す予定なんですが、敷金は返してもらえるんでしょうか?」
A 単純明快な質問ですね。こういう率直な言い方は大好きです。私も日頃から歯に衣着せぬ言い方を心がけています。思った事を率直に言う。気持ちがいいものです。
さて、本題に入りましょう。実は、あまり世間には知られていないのですが、平成17年12月16日に『最高裁判所』が画期的な判決を出しています。
そのポイントは、原則、通常損耗の補修費等は毎月の賃料に含まれている。「借主が普通に暮らしてできた損耗(通常損耗)の補修費は、原則貸主負担である。これを借主に負担させるには、その負担内容を具体的に明確に合意していなければならない。」というものです。この裁判でも、「契約書に、通常損耗補修費の借主負担特約の成立が認められるために必要なその内容を具体的に明記した条項はない。」と判断されています。この具体的且つ明確な合意が、本当に厳しく判断されているのです。
今年に入ってからも、福岡簡易裁判所において「敷引特約」について、前記最高裁判所判決を援用し「通常損耗の補修費等は毎月の賃料に含まれている。本件についても、借主は敷引特約の存在自体は認識していたが、その範囲・目的・性質等について具体的且つ明確な説明を受けていたとは認められない。」として、その成立を否定しました。これまた画期的な判決です。
先日、私も「敷引特約」によって敷金を返してもらえないという相談を受けました。その方は、退去以来2年以上に亘って、一人で不動産会社と交渉を続けておられました。その後、私からも敷金返還を要請しましたが、返還してもらえませんでした。やむなく訴訟提起し、何とかほぼ全額返還をしていただきましたが、多くの会社が誠実に対応してくれている中で、この対応には驚きました。
尚、最近は、「敷金」という言葉ではなく、「礼金」や「権利金」「保証金」「一時金」といった様々な言葉も使われ始めています。いずれにしても、賃貸物件の入居契約の時は、要注意です。そして、借主の側も家賃を延滞しないようしっかり生活設計をしましょう。
※ なお、その後、最高裁判所が「敷引特約」は、高すぎなければ有効、高すぎれば無効という判決を
出したりしています。これは、賃借人にとって不利ですね。それにしても、「敷金問題」は、永遠の課題ですね。
2015年08月02日
丸ちゃんの月刊ミニミニ法律コラム 16 「敷金に関する最高裁判所判決」
posted by maruta at 13:36| Comment(0)
| 日記
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